作業場レポートでは、高山・祭屋台保存技術協同組合が現在行っている屋台修理等の作業場をご紹介しています。
 
 作業場レポートの第1回目は、「お起し太鼓」で有名な岐阜県吉城郡古川町の「神楽台/御所車」修復の作業場をお伝えします。
 古川町の神楽台は、向町連合区・神楽台組のみなさんが大切に維持されている祭屋台。
 古川まつり本番では、屋台行列の先頭を行く重要な役割を務めています。
 この度当組合で古川町神楽台の御所車を修復をさせていただくことになりました。


古川町・神楽台組の皆さん

 この日、鍛冶部の田中鉄工所では、神楽台の車輪にあたる御所車に鉄の輪をはめ込む「輪じめ」と呼ばれる作業が行われました。
 依頼主である古川町・神楽台組の皆さんも「輪じめ」作業を一目見ようと、見学に来られていました。


 「輪じめ」はまず、あらかじめ作っておいた鉄の輪を炭で熱することから始まります。
 炭で熱するのは、鉄を熱で膨張させ、輪の直径を広くさせるためです。
 用いる炭は雑炭が一番良いと田中さんはいいます。最近流行の備長炭や楢炭などの良炭では、炭から遠くで熱を持つため、松や栗などの近くで熱を持つ雑炭が一番適しているということです。

鉄の輪を炭で熱します。


鉄の輪をはめ込む作業
 鉄が熱で膨張したら、その頃合いを見計らって素早く車輪にはめ込みます。
「円周率で1.5〜2分、直径にすると3厘もない本当に微妙な長さの違いで、うまくはめ込むことができません。鉄の輪をつくる時点で熱による鉄の伸び率を計算して作らなければならないので、その読みが一番難しいです。」と田中さんは教えてくれました。

 木の車輪部分にも工夫がされています。輪じめをして、初めて完全に木の接合部分が閉まるように、宮大工さんが予め遊び(隙間)を持たせて組んであります。
 こうしておかないと、鉄の輪で締め付けたときの圧力で、逆に接合部分が開いてしまいます。細かいところにも永年の技術と経験が活かされています。

車輪仕口接合部分の隙間


鉄を冷やす作業
 鉄の輪がうまくはまると、今度は濡れ雑巾などを使って、一気に鉄の部分を冷やし、締めていきます。
 最後に水の入ったレールの上を転がして更に冷やし、完全に木と鉄の部分を密着させ、輪じめ作業は終了です。


 古川町・神楽台組の方々も、「輪じめ」の出来映えにとても満足の様子でした。
 この後、御所車は漆塗りの工程を迎え、錺金具が取り付けられ、完成となります。
 古川町「神楽台」、来春の古川まつりでは、新しい御所車で曳き出されることになります。

取材/組合広報部


鍛冶部 田中さん親子

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■古川町神楽台「御所車・輪じめ」(2002.12.01)
■高山市下二之町「神馬台・組立作業」(2004.04.26)
 
 
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