私たちの生活に欠かすことのできない『紙』
  身近な存在であるからこそ、もっと『紙』を知ってほしい‥

紙のはじまり
 古くからわたしたちの生活に密着している紙。その起源はいつなのか・・・。
 古代エジプトに“パピルス”という紙の役割を果たしていたものがありました。それを紙のはじまりとする人もいます。しかし、パピルスは「パピルスという植物の茎を薄く切って作った」ものであり、「植物繊維を取り出し、これを水に分散させてから水をこし、薄く平らにからみ合わせる」という現在の『紙』の製法とは異なっています。厳密に言うとパピルスは『紙』のはじまりとは言えません。
 それでは、現在の『紙』のルーツは一体どこなのか・・・?
 その答えは、古代中国にありました。
 20世紀になって、中国の前漢時代の遺跡から、紀元前一世紀のものとみられる麻の繊維で作られた紙が発見されました。これが今のところ“世界最古の紙”といわれています。その紙づくりの技術は、改良されながら交易などを通じて全世界へ伝播し、現在に至っているのです。


トイレットペーパーは、世界共通語?
 トイレで紙を使うのは、当たり前だと考えていませんか? 「トイレットペーパーはどこの国でも使われているもの」と思っている人も少なくないでしょう。
 しかし実のところ、その習慣があるのは世界人口の3分の1に過ぎない、というデータがあるのです。トイレットペーパーを使わないところでは、どうしているか・・・。みなさんのご想像のとおり、水や砂、植物の葉などを使っているのです。
 日本では、トイレットペーパーは「衛生的で適度の柔軟性を有し、水にほぐれやすく、漉(す)きむら・破れ・穴など使用上に欠点がないもの」とJIS規格で決められており、世界でも肌触りが良いと評判です。また、その大半がロール型のトイレットペーパーです。
 ところでこのロール型ペーパー、使われ始めたのは19世紀半ばの欧米諸国でした。日本においては、欧米文化が本格的に入ってきた戦後、トイレも洋式ものが日本に上陸し、ロール型ペーパーも一般的になってきたのです。


投票用紙のふしぎ
 選挙権のある人なら一度は手にしたことがある選挙の投票用紙。通常、みなさんはボックスで記入して折りたたんで投票箱へ投票するだけですが、開票結果がでるまでには、以外と知られていない苦労があるのです。それは、開票時、折られた投票用紙を開く作業なのです。何千、何万と集まった投票用紙を開く作業は並大抵のことではありません。
 そこで最近の選挙に導入されたのが、「折ってもすぐ開く」投票用紙です。一見するとただの紙ですが、表面がビニールのような感じで、破ろうとしても少し伸びるだけで、鉛筆で書いたり消しゴムで消すことができます。折り目に沿って2つ折りにしても投票箱の中で開きます。この紙の正体は一体なにか・・・?
 実は、この投票用紙の原料は植物繊維ではなくポリオレフィン樹脂、つまり正確には紙ではなく薄く伸ばしたフィルムなのです。合成紙と呼ばれているこのフィルムには、表面に印刷適正を持たせるための表面加工を施しており、普通の紙と同様に印刷や書き込みが出来ます。「紙ではない紙」という、何とも不思議なシロモノなのです。