調査レポート
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景気動向調査
 平成12年10月  (平成12年10月末調査)
 岐阜県中小企業団体中央会では、県内中小企業の現況、課題を迅速にとらえ、これらの情報を関係行政等へ提供するとともに、本会事業の活用に資することを目的に、中小企業団体情報連絡員制度(政府指定事業)を実施しております。

 当制度に基づき、県内の主要業種85組合に中小企業団体情報連絡員を設置し、毎月の調査報告を収集しております。

 本レポートは、その中で、県内中小企業の景況動向について取りまとめたものであります。
  〔 1 〕10月の特色
◆ 一部の需要に、持ち直しの気配。
◆ 材料高製品安が収益を圧迫。
  〔 2 〕10月の概況
 当月の景気動向を景況感DI値で見ると、好転2ポイント、悪化23ポイントでDI値はマイナス21ポイントとなり、前月のマイナス25ポイントに較べ、4ポイントの改善である。 前月との数値の比較では、「好転」の割合は2ポイントで同じであり、「悪化」が27ポイントから23ポイントに減少している。

 例年、10月の前月比景況感は大きく好転した9月に対する対比で、若干後退する傾向にあるが、当月は反対に、若干の好転となっている。

 主な要因には、前月に例年の季節要因が働かず、低調であったことがあげられる。このため、個別の業種を見ると、殆どの業種が前月の景況感と同様の景況感になっている。

 特色としてあげられるのは、引き続き消費低迷、低価格化の中で、消費需要、建設需要の業種で景況感の悪化が著しいことがあげられる。また、全般的に売上が増えても収益に結び付かない、材料高製品安の傾向が強いことが、景況感を改善できない大きな要因になっていることもあげられる。

 景況感が好転しているのは機械・工具販売、広告美術である。

 景況感悪化業種が多いのは繊維・同製品、窯業・土石、商店街、建設業である。
  主な業種区分の業況概況
食料品は、漸く秋需が出て、前月比売上は増加になった。しかし、前年同月比は概ね横這いであり、依然需要の停滞が続いている。また、消費の低価格シフトに変化がなく、収益状況が依然厳しい。菓子業界では廃業、倒産が出ている。

繊維・同製品の織物、染色等川上業種では、前月比、前年同月比ともに横這いあるいは下降で推移し、厳しい業況となっている。また、アパレル等川下業種においては、秋冬物需要により前月比売上が増加となっている。しかし、消費停滞に加え、残暑が長かったことによる秋物苦戦、暖冬予想が早めに出たことなどにより、前年割れの傾向が強い。また、低価格輸入品による影響も不振の要因になっている。その中で、ニット製品では、イベントセールにより前年同月比10%程の売上の増加と健闘した。

木材・木製品は、前月に引き続き季節要因により前月比売上は増加となっている。しかし、比較的好調であった前年同月比に較べると、減少、増加に分かれ、業況もバラツキがある。
 建築木材ではプレカット材、集成材が堅調に推移しているが、在来木造住宅用の高級材は不振が続いている。家具は季節変動による動きがあるが、消費低迷に加え、輸入品の増加で厳しい状況が続いている。


紙・紙加工品、印刷、プラスチックは、前月比売上が増加傾向で、加えて前年同月比でも一部の業種で売上が増加し、需要に上向きの気配が出ている。しかし、石油系原材料の値上がりの影響を受け、材料高製品安が続いており、収益の改善はまだ見られない。

窯業・土石の陶磁器関係は概ね、前月横這いの低迷が続き、その中でタイルは前月に続き需要が堅調で売上が増加している。収益は全体に燃料等のコストアップ、製品安で悪化が続いている。建設資材関係は、前月比動向、前年同月比動向が複雑、不統一な動きになっている。その中で、前年同月比増加の業種が減少を上回っており、以前の長期間前年割れが続いていたことに較べれば、前月、当月の動きは改善していることになる。しかし、前月比での動きが小さく、先行不透明感が残っている。

機械・金属は、前月比、前年同月比とも売上が増加となり、回復の動きが強い。しかし、単価面の回復は見られないため、収益状況、景況感はともに改善していない。特に金型の長期低迷が続いており、先行についての不安が残っている。

各種物産品は、前年割れとなっている。前月比売上ではギフトは増加、観光物産は減少と分かれている。基調は低調横這いの推移となっている。

卸売業は、前月と概ね同様で、陶磁器卸は前月に引き続き需要の減少、輸入品との競合等で業況悪化、飛騨地区総合卸は前月横這いとなっている。

小売業は、概ね前月比、前年同月比ともに横這いで推移している。消費需要の低迷、低価格品へのシフト、大型店等との競合等により低迷が続いている。


商店街は、長引いた残暑のため秋冬物が動かなかったことも加わり、前月並みの不振な状況が続いた。例年9月、10月は需要が大きく、売上が大きく増加する傾向があるが、本年は残暑等の気象の影響も加わり、消費の盛り上がりが見られなかった。

サービス業は、前月比売上が増加となっている。しかし、前年割れの業種も過半あり、景況感も改善していない。このため、観光需要等、季節要因による売上増加であり、需要回復の動きによるものは考えにくく、厳しい業況の業種が少なくない。

建設業では、公共工事発注が部分的に出てきたため、前月比売上、受注の増加が一部の業種、地区であるが、それらの業種、地区でも前年割れの状態となっている。また、依然、民需は低迷が続き、建設需要の低迷が続いており、業況は一段と悪化している。

運輸業は、岐阜地区は横這い、県域は前月比、前年同月比ともに売上増加となっている。売上増加の県域貨物運送でも、受注単価が低いため収益、景況感は改善していない。
  主な調査項目での動向
売上動向は、増加35ポイント、減少21ポイントで、DI値はプラス14ポイントとなり、前月のマイナス1ポイントに対し、15ポイントの好転となっている。主な要因には食料等の秋需と機械・金属の売上増加があげられる。
 例年10月は、9月とともに秋需により需要が増加する時期であり、当月も季節要因が売上に貢献した。しかし、残暑が続いたため、秋物衣料が不振に終わり、冬物も出遅れ、加えて低価格志向が依然強く、売上の内容は改善していない。
 売上の数量が増えても、あるいは店舗の客数は増えても、低価格、低客単価、原材料のコストアップ等で収益の改善に結び付いていない業種が多く、個々の企業経営では厳しい状況が続いている。
 売上増加業種が多いのは食料品、木材・木製品、機械・金属、サービス業である。
 減少業種が多いのは窯業・土石である。


受注動向は、増加25ポイント、減少18ポイントで、DI値はプラス7ポイントとなり、前月のプラス3ポイントに対し、4ポイントのプラス増加となっている。
 業種別の動向は、概ね売上と同様で、増加要因には食料品等の季節需要と機械・金属の需要の増加があげられる。売上動向と異なっているのは繊維・同製品、木材・木製品で売上動向に較べ低水準で推移している。
 例年の動きに概ね似ているが、異なる点としては、発注が遅れている公共工事関係の受注が、まだ拡がっていないことがあげられる。
 受注増加業種が多いのは食料品、機械・金属、サービス業があげられる。
 受注減少業種が多いのは繊維・同製品である。


販売価格の動向は、上昇1ポイント、下降15ポイントで、DI値はマイナス14ポイントとなり、前月と同数値となっている。低価格品の輸入の増加が続き、消費需要の低価格化とともに、建設需要の受注単価の引下げが大きな要因となっている。
 価格上昇業種が直前3ヶ月間連続して1ポイント上昇し、前月には5ポイントであったが、当月は1ポイントとなり、力の弱さが窺える。
 下降業種が多いのは繊維・同製品、窯業・土石、建設業である。

収益状況の動向は、好転6ポイント、悪化20ポイントで、DI値はマイナス14ポイントとなり、前月のマイナス20ポイントに対し、6ポイントの改善となっている。前月には悪化が28ポイントであったことから、「悪化」の減少となっている。
 前月と同様、売上が増加しても価格の上昇はなく、低価格が続き、一方では石油系の値上がりによるコストアップがあり、利幅を確保できない状況が続いている。
 収益状況の改善傾向があるのはサービス業だけである。
 一方、悪化業種が多いのは窯業・土石、建設業である。
   〔 3 〕向こう3カ月の動向
 向こう3ヵ月の景気動向予想を景況感DI値で見ると、好転予想6ポイント、悪化予想23ポイントで、DI値はマイナス17ポイントとなり、当月実績のマイナス21ポイントに対し、4ポイントの改善予想となっている。
 好転、悪化の数値を当月実績と比較すると、「好転」が4ポイント増加、「悪化」が同数値となっている。
 例年10月の向こう3ヶ月は、季節要因として消費需要の減少により景況感が下降する傾向にあるが、今回の予想では改善する予想になっている。
 業種別の当月実績との比較では、改善予想は食料品、紙・紙加工品、印刷、プラスチック、機械・金属があげられ、悪化予想は繊維・同製品、サービス業となっている。
 これらの動向予想から、景気動向を推測することは困難であるが、機械・金属で回復の動きが安定してきていることが明るい材料といえる。
 好転予想となっているのは紙関係、印刷で、DI値が若干のプラスになっているのは木材・木製品、機械・金属である。
 悪化予想業種が多いのは繊維・同製品、建設業である。

売上動向予想は、増加予想17ポイント、減少予想13ポイントで、DI値はプラス4ポイントとなり、当月売上実績プラス14ポイントに対し、10ポイントの大きな下降となっている。
 当月実績の「増加」が35ポイントに対し、向こう3ヶ月の予想は17ポイントと、マイナス18ポイントと大きく下降しており、「増加」業種が減ることが下降の要因となっている。
 10月の季節需要に替わる季節需要が、向こう3ヶ月にはないことが売上業種減少の主な要因となっている。
 売上予想業種が多いのは食料品、木材・木製品、紙関係、印刷、機械・金属である。
 反対に減少予想業種が多いのは繊維・同製品、窯業・土石である。


収益動向予想は、好転予想10ポイント、悪化予想20ポイントで、DI値はマイナス10ポイントとなり、当月実績のマイナス14ポイントに対し、4ポイントの改善予想となっている。
 業種別に動向を見ると、業種間の相違が大きくなっている。悪化予想割合が大きいのは繊維・同製品50%、建設業40%である。
 反対に好転予想が大きいのは木材・木製品33%、機械・金属20%である。
 長期不況の間、概ね全般に厳しい収益状況の状態が続いてきたが、今回の予想では鮮明に格差が出ており、1つの節目を迎えるのではないかと感じさせる傾向である。
 好転予想業種割合が大きいのは食料品、木材・木製品、機械・金属である。
 反対に悪化予想業種割合が大きいのは繊維・同製品、窯業・土石、サービス業、建設業である。


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