調査レポート
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景気動向調査
 平成12年8月  (平成12年8月末調査)
 岐阜県中小企業団体中央会では、県内中小企業の現況、課題を迅速にとらえ、これらの情報を関係行政等へ提供するとともに、本会事業の活用に資することを目的に、中小企業団体情報連絡員制度(政府指定事業)を実施しております。

 当制度に基づき、県内の主要業種85組合に中小企業団体情報連絡員を設置し、毎月の調査報告を収集しております。

 本レポートは、その中で、県内中小企業の景況動向について取りまとめたものであります。
  〔 1 〕8月の特色
◆ 前月と同様、景況停滞
◆ 高校総体が需要を創出
◆ 猛暑が消費需要を減少
◆ 機械・金属、再び受注増加の動き
  〔 2 〕8月の概況
 当月の景気動向を景況感DI値で見ると、好転6ポイント、悪化29ポイントでDI値はマイナス23ポイントとなり、前月のマイナス25ポイントに対し、2ポイントの改善となっている。

 例年8月は、マイナス要因として夏期休暇、小売における消費需要の減退、プラス要因として公共工事発注の本格化、秋冬物出荷の本格化があげられ、これらを総合すると若干のマイナスとなっている。

 今回は、例年の動向とは反対に、若干の改善となっている。その要因には、岐阜県で開催された全国高等学校総合体育大会で、宿泊者の増加、看板等製作の需要創出効果があり、旅館、広告美術等の売上増加が第1にあげられ、次いで、受注増加による機械・金属の景況感の改善をあげることができる。

 他の業種は、前月の動向との間に若干の変化があるものの、概ね、前月と同様な動向となっている。

 機械・金属については、月毎に動向が悪化、改善と変わり、前月は悪化の動向であったが、当月は若干の好転となっている。低価格の厳しい取引条件ではあるが、引合、受注の増加傾向となっており、今後の推移に留意すべき状況と考えられる。

 消費需要、建築需要、公共工事発注等の需要動向は依然低迷し、また、販売、受注における競合は一段と厳しく、さらに、石油系に関連する値上がりでコスト・アップとなり、収益も圧迫されるなどマイナス要因が大きく、殆どの業種で依然不況感が強い。公共工事発注、景気対策への要望が依然続いている。

 これらを総合すると、流動的な状況を持ちながらも、需要増加が一部の業種に見られるが、その動きは力弱く、一方、低価格、過当競争の先行不透明感のマイナス要素は極めて強く、不況色は依然濃厚な状況にある

 前月比好転業種は集成材、鋳物、機械・工具、広告美術、建築板金である。

 前月比悪化業種が多いのは食料品、繊維・同製品、商店街、建設業である。
  主な業種区分の業況概況
食料品は、商品により売上動向が異なるが、前月同様の猛暑の条件の中、概ね低調横這いで推移している。また、前月同様、量販店等との競合、消費者の低価格志向等により販売価格が低く、収益悪化の業種が多く、景況感の悪化が続いている。

繊維・同製品は、秋冬物商品の出荷による売上増加業者があるが、全体的には荷動きが低調で、前月横這い、又は減少の業種が多い。特に販売価格が厳しく、景況感の悪化が依然続いている。また、靴下等で輸入品の圧迫が大きな問題であり、国内業界の業況悪化の重要な要因となっている。

木材・木製品は、季節需要、住宅建築低迷等の実需不足で、前月に低調横這いとなっている。
特色としては、在来型住宅建築の減少があげられ、東濃ひのき、銘木等の低迷の要因となっている。一方、集成材は反対に需要が上向いている。また、家具では輸入品の増加が益々重要な問題になってきている。

紙・紙加工品、印刷、プラスチックでは、需要動向は概ね前月横這いになっているが、原材料価格の上昇、販売価格の低迷による収益悪化が大きな問題となっている。プラスチックでは、その典型的な状態にあり、実需が増加しているが景況感は改善していない。業況は低調横這いとなっている。


窯業・土石では、陶磁器関係は前月に引続き、前月横這い、低迷が続いている。建設資材関係は、前月比動向は業種により異なるが、前年対比は概ね全般的に上向きとなっている。タイル、石灰は前年を上回る需要となっているが、燃料コストの上昇、製品価格の低迷で収益性は厳しく、景況感は改善していない。

機械・金属は、需要の回復傾向が強まっているが、季節要因(夏期休暇)が加わり、前月比売上動向は横這いとなっている。低価格の問題が依然大きいが、需要回復動向を受け、景況感DI値はプラスに転じた。

各種物産品は、動向が大きく分かれ、観光物産は前月比、前年対比ともに売上増加、業況が好転、ギフトは全く反対の動きで悪化となっている。


卸売業は、前月と概ね同様で、陶磁器卸では前月に引続き需要減少、消費の低迷、輸入品との競合等、マイナス要因が多く業況が悪化しいている。飛騨地区総合卸は変化なく、前月横這いとなっている。特に、観光客が増加しているのに対し、食料品等の需要にその影響が出ていない。

小売業は、夏物商品のピーク後、夏期休暇等の季節要因で前月比売上が減少している。その中で、自動車が新車、中古車ともに需要増加の動きとなり、回復が期待されている。全般的に消費者の低価格志向が依然強く、収益、景況感の悪化が続いている。

商店街は、季節要因に前月比売上が減少となっている。また、前年対比についても、5回答の内4回答が前年割れとなっている。猛暑等の季節要因、消費低迷、さらには大型店の影響等の要因があげられ、引続き厳しい状況が続いている。

サービス業は、他に較べ順調な業種が多い。前月比の売上、受注のDI値もプラスとなっている。しかし、その中で、宿泊者数が急増した旅館、看板等の受注があった広告美術は、岐阜県で開催された全国高等学校総合体育大会の影響が大きく、通常の需要回復とは異なる要因であるため、通常の需要動向としては、概ね、横這いで推移しているものと考えられる。


建設業は、公共工事発注が全体としては出遅れ状況にはあるが、漸く動き始め、受注が若干プラスになっている。しかし、売上には結び付いていないため、売上動向は前月比横這いとなっている。また、民需については住宅建築を中心に依然低調に推移しているが、鉄鋼建築関係だけは前月に引続き上昇傾向となっている。
 公共工事、民需ともに、受注競争が依然厳しく、受注単価は一段と厳しくなっている。

運輸業は、概ね前月横這いの低調な業況で推移しているが、今後の問題として、軽油の値上がりによるコスト・アップがあげられ、収益への圧迫が懸念されている。
  主な調査項目での動向
売上動向は、増加21ポイント、減少33ポイントでDI値はマイナス12ポイントとなり、前月のマイナス3ポイントに対し、9ポイントの比較的大きい悪化となっている。
 例年8月には、夏期休暇のマイナス要因、公共工事の本格化、アパレルの秋冬物出荷の本格化のプラス要因があり、マイナス要因が若干強い傾向がある。当月はこの中の公共工事発注がまだ不十分であること、猛暑の影響で消費が減退したことのマイナス要因が強い。
 また、特殊な要因として、岐阜県で開催された全国高等学校総合体育大会があげられ、旅館等の売上増加に寄与している。機械・金属等稼動日数の影響が大きい業種は、夏期休暇の影響で殆どの業種が前月比減少となっている。
 これらを総合すると、前月までの業況に季節要因が加わった業況で推移したこととなり、依然厳しい売上動向が続いている。
 売上増加業種が多いのはサービス業。減少業種が多いのは窯業・土石、小売業、商店街である。

受注動向は、増加17ポイント、減少31ポイントで、DI値はマイナス14ポイントとなり、前月のマイナス11ポイントに対し、3ポイントの悪化となっている。
 特色としては、業種間での動向の差が強く出たこと、また、業種の中で売上動向と受注動向とは異なった動きとなっている業種が通常より多いことがあげられる。個別業種の動向としては特色があるが、総合すると概ね前月に引続き減少傾向となっている。
 DI値がプラスとなっているのは機械・金属、サービス業、建設業である。減少業種が特に多いのは繊維・同製品、小売業、商店街である。

販売価格の動向は、上昇4ポイント、下降16ポイントで、DI値はマイナス12ポイントとなり、前月のマイナス17ポイントに対し、5ポイントの大幅な改善となっている。売上、受注の不振による競争激化のため、依然下降が続いているが、当月は、若干の緩和傾向になっている。
 しかし、すでに採算確保が困難な価格水準となっており、厳しい状況は依然変わらない。特に、仕事の引合が出てきた業種にあっても、価格面の改善が全くない状況にあり、低価格は根強さを窺うことができる。一方、原材料は、石油系の上昇が依然続いており、材料高製品安の傾向が拡がっている。
 下降業種割合が多いのは食料品、繊維・同製品である。上昇としているのは東濃ひのき、石油販売、鉄構造物である。

収益状況の動向は、好転7ポイント、悪化29ポイントで、DI値はマイナス22ポイントとなり、前月のマイナス24ポイントに対し、2ポイントの改善となっている。
 業種別に前月の動向と比較した場合、全体的に前月と同様の動向をしているが、サービス業だけが好転に大きく変化している。この改善には、全国高等学校総合体育大会による旅館等での売上増加が寄与したものであると考えられる。この特殊な要因を除けば、全般的に概ね前月と同様の悪化傾向が続いている。悪化要因には、前月と同様に売上不振、低価格、原材料(石油系・紙)の値上がりがあげられる。
 悪化業種が多いのは小売業、紙・加工品、窯業・土石、木材・木製品、食料品である。
   〔 3 〕向こう3カ月の動向
 向こう3ヵ月の景気動向予想を景況感DI値で見ると、好転予想12ポイント、悪化予想22ポイントで、DI値はマイナス10ポイントとなり、当月実績のマイナス23ポイントに対し、13ポイントの大幅な改善予想となっている。

 当月実績値との比較でも、好転予想が増え、悪化予想が減る、好転のモデル的な形となっている。

 向こう3ヶ月の内の9月、10月は、例年、需要動向のマイナスの季節要因は殆どなく、反対に、消費、観光、建設でプラスの季節要因があり、また、マイナス要因の大きい8月との対比となることから、景況感が改善する傾向がある。今回は、これらの季節要因が働き、景況感が改善する予想になっている。

 業種区分別に当月実績と比較すると、木材・木製品、流通関係、サービス業、建設業で改善が予想され、特に建設業で大幅な改善となっている。流動的な業況を続けている機械・金属は、当月実績に引続き、若干の好転の予想になっており、明るい材料となっている。

 これらを総合すると、季節要因を主な要因として、水面下での改善が進む予想となっている。

 好転予想は木材・木製品、機械・金属、サービス業、建設業である。

 また、悪化予想業種が特に多いのは繊維・同製品、食料品である。

売上動向予想は、増加予想19ポイント、減少予想21ポイントで、DI値はマイナス2ポイントとなり、当月売上実績マイナス12ポイントに対し、10ポイントの大幅な改善予想になっている。
 向こう3ヵ月には、先述のとおり売上増加の季節要因があり、関係業種の売上増加予想が改善に寄与している。また、機械・金属では増加予想が特に多く、季節要因(夏期休暇要因の反動)とは別に、需要動向の回復も含まれ、全体の改善動向に占める寄与度が大きい。
 季節需要で不安材料となっているのは食料品、アパレルで、例年に較べ増加傾向が小さいことであり、消費需要不振の底深さが窺われる。
 また、大半の業種が増加であっても、水面下での増加であり、今後の需要動向としての評価は、依然低迷が続くものと予想される。
 増加予想DI値がプラスになっているのは、木材・木製品、機械・金属、各種物産品、建設業、運輸業である。反対に減少予想DI値がマイナスになっているのは繊維・同製品、小売業である。

収益動向予想は、好転予想7ポイント、悪化予想20ポイントで、DI値はマイナス13ポイントとなり、当月収益状況実績のマイナス22ポイントに対し、9ポイントの大幅な改善予想となっている。季節要因による売上、受注の増加予想業種の増大により、収益状況の改善傾向が出ている。マイナス20ポイント台から、10ポイント台への上昇であり、明らかな改善であるが、これまでの長期不況下での推移から、この改善の確かさには不安が大きく、今後の推移を注視する必要がある。
 特に、受注が増えている業種においても、販売価格は依然厳しいなど、低価格が根深く、一方、石油関係の値上がりによるコスト・アップが依然続いており、収益環境は依然厳しい状況が続くものと予想される。
 特色として、悪化予想業種、好転予想業種は全般的に分散しており、動向の業種区分間の格差が縮小する動向予想になっていることがあげられる。
 他に較べ悪化予想が多いのは食料品、窯業・土石である。


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