調査レポート
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景気動向調査
 平成12年5月  (平成12年5月末調査)
 岐阜県中小企業団体中央会では、県内中小企業の現況、課題を迅速にとらえ、これらの情報を関係行政等へ提供するとともに、本会事業の活用に資することを目的に、中小企業団体情報連絡員制度(政府指定事業)を実施しております。

 当制度に基づき、県内の主要業種85組合に中小企業団体情報連絡員を設置し、毎月の調査報告を収集しております。

 本レポートは、その中で、県内中小企業の景況動向について取りまとめたものであります。
  〔 1 〕5月の特色
◆ 景況感が一段下降。
◆ 低価格化が依然進行。
  〔 2 〕5月の概況
 当月の景気動向を景況感DI値で見ると、好転1ポイント、悪化27ポイントでDI値はマイナス26ポイントとなり、前月のマイナス23ポイントに較べ、3ポイントの若干の下降となっている。数値の変化では「好転」が、4ポイントから1ポイントに下降し、これが全体の変化の要因となっている。

 例年5月は、連休、観光シーズン、夏物への切り替え、公共工事の端境期等の季節要因があり、業種によって需要が増加、減少に分かれ、それらを総合すると、前月比下降となる場合が多い。

 当月(5月)も、概ね例年と同様な推移となり、観光関連の売上増加、製造業等での稼動日数減少による売上減少、建設業の売上、受注の減少等々が見られる。これらの季節要因ではマイナス要因は大きく、プラス要因は小さく作用し、総合では低調気味の横這いで推移している。

 動向の中で、販売価格の下降がますます大きな問題となっている。消費者の低価格志向に加え、同業者間の競合、輸入品との競合により販売価格、受注価格が一段と下降している。2月、3月に緩和の動きが見られたが、先月(4月)に続き、連続でDI値がマイナス20ポイント台となっている。

 販売価格の動向に合わせ、収益状況も同様な動きとなり、悪化傾向が強くなっている。

 景気回復について、極く一部に希望的な見方があるが、回復の動きが見られない。先行不透明との見方が圧倒的に強く、また、公共工事の早期発注等、景気対策の要望が依然根強く出されている。

 好転の業種は観光シーズンで堅調が続いた高山旅館だけである。

 前年比景況感悪化が強いのは木材・木製品、食料品、窯業・土石、商店街、繊維・同製品である。

  主な業種区分の業況概況
食料品は、前月比売上増加傾向が出ている。しかし、景況感は前月同様、悪化傾向が強く出ている。量販店等との競合、消費者の低価格志向等により販売価格の下降、販売条件の悪化が一段と進み、これに起因する収益状況の悪化も進んでいる。このため業況は一段と厳しくなっている。

繊維・同製品は、夏物の動きが鈍く、秋冬物の引合等も遅れており、全体的に業況が悪化又は低調横這いとなっている。ただし、夏物のTシャツ、婦人用靴下は需要が順調に推移し、前年対比売上増加となっている。

木材・木製品は、全般に需要停滞期に入り、前月比売上減少となる業種が多い。住宅建築の動向については、見方が業種によって微妙に異なり、需要動向も業種によっては若干ではあるが異なっている。高級材、持家住宅用の木材需要が特に低調である。木製家具については、前月比売上は増加、減少に分かれたが、季節要因を除いた場合にはともに厳しい状況が続いている。特に、輸入品との競合の問題が加わり、取引先である問屋での倒産発生等厳しさを増している。

紙・紙加工品、印刷、プラスチックは、売上動向が前月横這い、または減少となっている。また、販売価格の下降、収益状況の悪化業種が多く、業況悪化となっている。原料の値上がり、受注の減少等悪化要因が業種毎にそれぞれ指摘されているが、その中で、受注減少の指摘が多い。

窯業・土石は、陶磁器関係、建設資材関係ともに売上、受注が減少となり、景況感も低調横這い若しくは悪化となっている。陶磁器関係では、長期低迷のまま先行不透明感も強く、益々厳しい業況となっている。建築資材関係では、公共工事端境期が大きな要因となっている。

機械・金属は、2月、3月の需要回復に対し、前月は下降、当月は前月横這いとなり低調に推移している。一部に引合があり、受注が増えている企業があるとの情報があり、その点では明るい材料になっているが、受注単価が厳しいためそれらの企業でも収益は厳しく、採算確保が難しい状況にある。

各種物産品は、観光物産は前年比改善、ギフトは前年割れと分かれた。前年比でも、観光物産は前月横這い、ギフトはシーズン後で売上減少となっている。

卸売業は、前月と全く同様の動向で、陶磁器卸では前月に引き続き需要減少、消費需要の低迷、輸入品との競合等、マイナス要因が多く業況が悪化している。飛騨地区総合卸は、特に変化が出ていない。

小売業は、全体的に前月横這い、低調な業況で推移している。消費需要の低迷、消費者の低価格志向、量販店等との競合等、マイナス要因が長期間強く、底這いの業況が続いている。

商店街は、地域により売上動向が分かれている。岐阜・大垣は低調横這い、前月比減少となり、一方、多治見、恵那、高山では、前月比増加となっている。しかし、多治見、恵那は前年対比では売上減少となっている。
 これらを総合すると、依然、商店街は低迷が続いているものと考えられる。消費需要の低調とともに、大型店、量販店、空店舗等、中心商店街の課題が大きく影響している。

サービス業は、前月比売上増加業種が多い。特に連休、観光シーズンで、観光地旅館は売上増加となっている。ただし、前年対比では概ね横這いであり、景況感の改善には至っていない。 前年対比で売上が増加しているのは情報サービス、前年割れは自動車タイヤ整備販売、クリ−ニングである。業況が業種によって多様に分かれている。

建設業では、前月に続き、公共工事端境期、民需低迷で、売上、受注の減少となり、また、受注競争激化で受注単価の下降が強く、景況感は悪化傾向となっている。特に、資金繰り悪化の業種が増えており、懸念されるところである。公共工事の早期発注の要望が多い。

運輸業では、前月横這いで、前月比変化の少ない状況で推移している。
  主な調査項目での動向
売上動向は、増加15ポイント、減少32ポイントでDI値はマイナス17ポイントとなり、前月のプラス2ポイントに対し、大幅な減少傾向となった。
 前月における対前月比のDI値がマイナス36ポイントであり、2ヵ月連続で大きく後退した。
 例年、3月のピークに対し、4月、5月は下降となり、今回も同様に下降している。
 季節要因には、プラス要因として観光、夏物移行があげられ、マイナス要因には連休、公共工事端境期等があげられる。
 夏物の動きが遅い、あるいは、消費節約等により、プラス要因が弱く働き、一方、連休期間の長期化、公共工事発注及び、民間工事の冷え込み等のマイナス要因が強く作用している。
 売上が前月比増加している業種でも殆どの業種が前年対比では横這い又は減少となっている。需要の低迷の中、同業者間競争が依然強く、低価格化が売上減少の一因になっている。
 売上増加業種が多いのは食料品、サービス業、商店街である。反対に、減少業種が多いのは、繊維・同製品、木材・木製品、窯業・土石である。

受注動向は、増加11ポイント、減少34ポイントで、DI値はマイナス23ポイントとなり、前月のマイナス8ポイントに対し、15ポイントの大幅な減少傾向となった。
 全体的に売上動向と同様の動向であり、主な減少要因には、売上動向と同様で、季節要因があげられ、プラス要因が弱く、マイナス要因が強く作用し、受注減少となっている。相違点としては、建設業で売上の減少傾向に比較し、より大きい減少傾向になっていることが指摘される。
 受注増加業種が多いのは食料品、サービス。一方、減少業種が多いのは窯業・土石、建設業、次いで木材・木製品、繊維・同製品となっている。

販売価格の動向は、上昇1ポイント、下降24ポイントで、DI値はマイナス23ポイントとなり、前月のマイナス24ポイントに続き、2ヵ月連続のマイナス20ポイント台となっている。
 2月、3月連続して緩和の動きが見られたが、4月、5月の強い下降傾向により、改善の動きが再び失くなった様相にある。一部業種に引合があるが単価が厳しいとの報告があり、販売価格、受注単価の厳しさが受注確保での重要課題になっている。
 下降業種が特に多いのは、紙・加工品、印刷、プラスチック、木材・木製品、食料品、建設業である。

収益状況の動向は、好転3ポイント、悪化27ポイントで、DI値はマイナス24ポイントとなり、前月のマイナス20ポイントに対し、4ポイントの悪化なり、また、2ヵ月連続の悪化となっている。
 売上増加の業種においても収益状況が悪化している場合もあり、売上の低迷に加え、販売価格の下降の影響が出ているものと推測される。
 動向は業種によって偏りが出ており、食料品、紙・加工品、印刷、プラスチック、窯業・土石で悪化傾向が大きく出ており、一方、サービス業では好転傾向となっている。
   〔 3 〕向こう3カ月の動向
向こう3ヵ月の景気動向予想は、好転予想9ポイント、悪化予想29ポイントで、DI値はマイナス20ポイントとなり、当月実績のマイナス26ポイントに対し、6ポイントの改善予想となっている。
 「好転」の回答が、当月実績1ポイントに対し、向こう3ヵ月の予想が9ポイントに増加した結果である。
 業種区分別に当月実績と比較すると、同レベルでの推移、改善、悪化、それぞれに分かれている。その中で、顕著な動向としては、一般機器が低調、停滞から好転していること、ギフト、夏物商品の季節需要の一部に好転が予想されていることがあげられている。
 季節要因については、プラス要因のギフト等、一部業種で好転予想になっており、また、マイナス要因の建設、食料品等では、厳しい予想がされ、これらを総合すると、マイナスの傾向が予想されている。一方、季節要因の影響が少ない機械・金属、情報サービス、産直住宅では、受注、引合が増加する予想になっており、景況改善の牽引力として期待される。
 これらを総合すると、全体的には依然先行不透明、需要低迷、低収益の景気低迷が続く中で、一部に需要回復の動きが微かに出ている、という状況にあると推測される。
 悪化予想業種割合が大きいのは食料品、繊維・同製品、紙・加工品、商店街、建設業である。
 好転予想業種は米菓、金型、機械・工具販売、ギフト、家電機器販売、情報サービス、産直住宅である。

売上動向予想は、増加予想16ポイント、減少予想21ポイントで、DI値はマイナス5ポイントとなり、当月実績マイナス17ポイントに対し、12ポイントの比較的大きい改善予想になっている。
 改善の要因には、3月の需要ピーク時との対比が概ね終了し、前月比マイナス効果となった季節要因の影響が小さくなったこと、また、減少、停滞傾向にあった機械・金属が増加予想に転じたことがあげられる。
 全体的には、依然消費需要関係、建設業関係で需要の停滞、先行不透明感が強く、水面下での推移が予想される。その中で、機械・金属が停滞から増加に好転する予想は、景況改善を牽引する力として期待されるところである。
 増加予想業種割合が大きいのは機械・金属、小売業。反対に、減少予想業種割合が大きいのは紙・加工品、印刷、プラスチック、建設業である。

収益動向予想は、好転予想9ポイント、悪化予想27ポイントで、DI値はマイナス18ポイントとなり、当月実績のマイナス24ポイントに対し、6ポイントの改善傾向予想となっている。
 季節需要で売上増加が予想される業種及び一般機器で好転が予想され、改善傾向の要因となっている。しかし、全般的には、消費需要関係、建設業関係の業種を中心に需要の停滞、低価格が続き、収益が悪化する予想となっている。このため、厳しさを増す企業経営が増大するものと推測される。
 好転予想となっているのは、ギフト等の季節需要が期待される業種と一般機器である。悪化予想業種割合が大きいのは食料品、紙・加工品、印刷、プラスチック、建設業、窯業・土石である。
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