調査レポート
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景気動向調査
 平成12年3月  (平成12年3月末調査)
 岐阜県中小企業団体中央会では、県内中小企業の現況、課題を迅速にとらえ、これらの情報を関係行政等へ提供するとともに、本会事業の活用に資することを目的に、中小企業団体情報連絡員制度(政府指定事業)を実施しております。

 当制度に基づき、県内の主要業種85組合に中小企業団体情報連絡員を設置し、毎月の調査報告を収集しております。

 本レポートは、その中で、県内中小企業の景況動向について取りまとめたものであります。
  〔 1 〕3月の特色
◆ 季節要因で売上増、景況感改善。
◆ 寒い気候で春物不振。
◆ 低価格志向、競争激化が依然続く。
  〔 2 〕3月の概況
 当月の景気動向を景況感DI値で見ると、好転3ポイント、悪化16ポイントでDI値はマイナス13ポイントとなり、前月のマイナス25ポイントに対し、12ポイントの大幅な改善となっている。前月の動向との比較で、「悪化」が9ポイント減少、「好転」が3ポイント増加で、数値を見る限りにおいては、明らかな回復の動きとなっている。

 しかし、この改善は季節要因の影響が大きく、景況回復の動きと考えることにはまだ無理がある。例年3月は、入学、就職等に関する季節需要が大きいこと、公共工事の年度末完成、企業の決算月対策等による売上増加があり、これに伴い景況感の改善の動きが出る。

 当月も、この季節需要による売上増加が多く見られており、景況感の改善も、この季節要因が大きいものと考えられ、また、前月比での売上増加となっていても、前年対比では、大半が横這い若しくは減少となっており、実質の需要増に至っていない、景気拡大の動きとは見られないと考えられる。

 業種別に見ると、流通関係業種、食料品、繊維・同製品の消費需要関係業種で、「悪化」が大きく減少していることが最も大きな変化である。また、当月公共工事関係で発注増があり、建設関係の景況感の改善に寄与している。

 これらを総合すると、季節需要による景況感の改善が見られたほかは、概ね、前月と同様の状況にあり、景気動向としては、低迷が続いている。

業種が順調に推移しているのは、前月に続き木材と情報サービスだけである。

 好転の業種は家電機器販売、自動車車体整備である。

 前月比悪化業種の割合が他に較べ多いのは木材・木製品、食料品である。

  主な業種区分の業況概況

食料品は、季節需要により前月比売上増加の業種が多い。しかし、前月比増であっても、前年対比は横這い若しくは減少であり、実質では需要は増えていない。また、需要も低価格品へのシフトが強く、激しい競争下、収益状況の悪化傾向が強く、業況は一段と激しいものになっている。


繊維・同製品は、川上業種、川下業種との差もなく、全般に多様な売上動向となっている。アパレル関係は、寒い気候が長引いたことにより、春物製品が低調に推移している。
 前月比売上が増加した業種も前年対比は概ね横這い、業況の改善には至っていない。低調横這いが続いている。

木材・木製品は、依然建築用木材で需要の減少が出て来ている。特色としてプレカット材等の一般建築用では比較的堅調な需要が続いているが、反対に、銘木等の高級材は極めて不振であり、2極化していることがあげられる。
 家具は、季節需要により前月比売上増加となっている。前年対比では、減少、増加に分かれるが、低価格化、輸入品との競争激化等、業況は依然厳しい状況が続いている。

紙・紙加工品、印刷、プラスチックは、業種により季節需要の有、無に分かれるが、季節要因が最も大きく出ているのはプラスチックである。前月、前年を上回る受注のあった特殊紙が前年並みになった。また、当月売上、受注が増加したプラスチックは、競争激化、価格下降のマイナス要因も持っている。これらを総合すると、短期の変動はあっても、業況回復の基調は容易に現れず、低調な業況が続いている。


窯業・土石の食器中心の陶磁器は、前月に引き続き低迷となっている。特に、低価格物の輸入品との競合が激化するなど、業況悪化の要因も強まっており、今後の推移が懸念される状況にある。
 建築関連資材は、公共工事の年度末完成時に当たり、前月比売上が増加している。これを前年対比で見ると、増加とする業種が多く、最近には見られない需要動向となっている。
 しかし、業界では、一過性と見て、公共工事発注の端境期を迎える今後の推移を懸念している。

機械・金属では、前月に続き、前月比売上増加となっている。また、前年対比においても、一部に売上増加の業種が出て来た。これまで大半の業種で前年割れであったことを考えれば、回復の動きを期待させるものである。

各種物産品は、季節需要により、前月比大幅な売上増加となっている。しかし、前年対比では、横這い若しくは減少となっており、業況は依然厳しい状況が続いている。

卸売業では、季節要因の影響が出ていない。陶磁器卸では、前月に引き続き、需要減少、消費節約、輸入品との競合等、マイナス要因が多く、業況が悪化している。飛騨地区総合卸は、特に変化が出ていない。

小売業では、季節要因による前月比売上増加が半分、他は前月横這いとなっている。前月比売上増加業種の前年対比を見ると、増加、横這い、減少に分かれ、総合すると、概ね横這いとなる。また、他の小売業においても本来季節需要が期待できる業種でも、今回は季節需要が低く、前月比売上増加に至らなかったとしている。
 これらを総合すると、消費需要の冷え込みが強く、依然、低迷が続いているものと考えられる。

商店街では、入学等の季節需要により前月比売上増加の傾向が強く出ている。しかし、岐阜、高山では低調に推移し、前月横這いの売上になっている。売上増加の商店街においても、前年対比では、横這い若しくは減少となっており、実質は低迷の厳しい状況が続いている。共通していることとして、寒い気候が長引いたため春物が不振であったことがあげられる。

サービス業では、7回答のうち5回答が、前月比売上増加となっている。この内、前年対比で売上増加となっているのは2回答で、他は横這い若しくは減少となっている。
 また、売上増加回答のうち2回答が自動車関連サービスである。他の売上増加業種と同様、この売上増加も季節需要によるものと考えられ、実質的な需要の拡大とは推測できない。依然厳しい業況が続いている。

建設業では、公共工事関係で発注が出た地域・業種があり、受注が前月比増加している。売上については、前月に引き続き繁忙期にあり、前月並みの堅調な状況で推移している。しかし、4月からの発注端境期と、低迷が続いている民需のため、先行不安が大きく、また過当競争等により、依然不況感が強い。また、建設廃棄物処理等の環境問題への対策、公共工事発注業務の電子化等、経営課題も大きくなっており、企業経営は厳しさを増している。

運輸業は、季節需要が期待できる月に当たっているが、需要動向は低く、低調な業況で推移している。

  主な調査項目での動向
売上動向は、増加47ポイント、減少13ポイントでDI値はプラス34ポイントとなり、前月のマイナス3ポイントに対し、37ポイントの大幅な改善、好転となっている。
 例年3月は、入学、就職、引越し等の季節の変わり目や、公共工事の完成期等の売上増加する季節要因が大きい月である。今回も、この季節要因により売上増加となっている。このため、売上増加業種は、小売業等流通関係、食料品等消費財関係で多い。
 しかし、これらの増加業種の前年対比を見ると、大半が横這い若しくは減少であり、実質的には需要の拡大になっていない。
 このため、大半の業種が業況の改善に至っておらず、回復感は出ていない。
 明るい材料としては、機械・金属で前月に引き続き、前月比売上増加となり、景況感も「悪化」から「横這い」に変化し、底打ち的傾向が見られることがあげられる。
 売上増加業種割合が特に大きいのはサービス業、窯業・土石、食料品、商店街である。DI値がマイナス値になっているのは紙・紙加工品、卸売である。

受注動向は、増加38ポイント、減少13ポイントでDI値はプラス25ポイントとなり、前月のマイナス9ポイントに較べ、34ポイントの大幅な改善、好転となっている。
 増加要因には、売上動向と同様、食料品等の季節要因による増加があげられるが、売上動向に較べればその影響が小さく、反対に建設で増加が強く出ている。
 建設では、公共工事発注の端境期を4月以降に控え、先行不安感が強く、また、食料品等の消費需要関係の実需が増えていない。過当競争、低価格化の中、先行不透明感が依然強い状況にある。機械・金属で、売上動向同様、受注の増加が見られるが、その内容に決算月の調整があり、実需の拡大とは異なる要因も含まれ、明るい材料として期待をされるが、今後の推移を注視する必要がある。
 これらを総合すると、好転はしたが、季節要因によるものが大きく、実需の増大の要素は小さいものと考えられ、景気動向としては概ね横這いの状況にあるものと考えられる。
 受注増加業種割合が特に多いのは、サービス、建設、機械・金属、食料品、各種物産品である。減少傾向にあるのは、繊維・同製品、卸売、紙・紙加工品である。

販売価格の動向は、上昇3ポイント、下降13ポイントで、DI値はマイナス10ポイントとなり、前月のマイナス13ポイントに対し、3ポイントの改善である。また、前月においての前月比で5ポイント改善しており、2ヶ月連続の改善となった。
 競争激化、低価格指向が長期間続いている中で、水面下ではあるが、望ましい動きとなっている。各業種では競争激化等、市場動向に変化が見られていないため、この改善も、季節要因による一時的な動きである可能性があり、今後の推移を注視する必要がある。
 下降傾向が強いのは、窯業・土石、木材・木製品、食料品である。

収益状況の動向は、好転10ポイント、悪化22ポイントで、DI値はマイナス12ポイントとなり、前月のマイナス27ポイントに対し、15ポイントの大幅な改善となっている。収益状況の好転は、売上増加業種に見られるが、食料品だけは売上は増加、収益は悪化の状況で、問題は深刻である。
 収益状況の好転の傾向があったのはサービス、商店街等であり、悪化傾向が強いのは、食料品、窯業・土石、卸売である。また、業種により多様に分かれたのは木材・木製品である。
   〔 3 〕向こう3カ月の動向
 向こう3ヵ月の景気動向予想は、好転予想4ポイント、悪化予想25ポイントで、DI値はマイナス21ポイントとなり、当月実績のマイナス13ポイントに対し、8ポイントの悪化予想となっている。
 当月実績との比較を個別の業種で見ると、特色として全般的、若干の悪化増が見られることがあげられる。その中で、繊維・同製品だけは突出の悪化増となっている。
 例年、3月の大きな季節需要の反動で、向こう3ヵ月予想は景況感が悪化するが、今回は比較的低目の悪化予想となっている。
 その要因に3月の季節需要の盛り上がりが低いため、向こう3ヵ月予想との差が小さいこと、また、向こう3ヵ月の実需増への期待などが考えられるが、評価の難しいところである。
 これらを総合すると、景況動向の明らかな変化の兆候が見られないことから、当月の実質の需要動向に概ね横這いで推移するものと予想され、依然、厳しい業況が続くものと推測される。
 悪化予想業種が多いのは、繊維・同製品、商店街であり、DI値が±0のレベルにあるのは小売業、サービス業である。
 好転予想業種は米菓、家電機器販売、高山旅館である。

売上動向予想は、増加予想14ポイント、減少予想24ポイントで、DI値はマイナス10ポイントとなり、当月実績のプラス34ポイントに対し、44ポイントの著しい下降となっている。 このため、前月需要動向に対して、大きな格差で減少する予想となっている。
 この要因に、例年の動向では3月の大きな季節需要の反動があげられるが、今回は様相が異なっている。
 売上動向予想を業種別に見ると、3月動向に売上増加があった食料品、流通関係、サービスが引き続き売上増加、あるいは、前月横這いの予想となっており、マイナス要因にはなっていない。
 また、3月売上増加であったものの中で、減少予想になったものは、機械・金属、窯業・土石であり、繊維・同製品、建設においても大きな減少予想となっている。
 これらの動向からは、消費需要は概ね3月上昇傾向が維持され、機械・金属、建設等の生産財等の関係業種で減少の予想が強く出ていることが指摘される。
 このため、需要動向の足どりは重く、景況回復の期待も薄いものと推測される。
 増加予想業種が多いのは食料品、サービス業であり、減少予想業種が多いのは、繊維・同製品、窯業・土石、建設である。

収益動向予想は、好転予想6ポイント、悪化予想23ポイントで、DI値はマイナス17ポイ
ントとなり、当月実績のマイナス12ポイントに対し、5ポイントのマイナス増による悪化予想となっている。
 売上動向予想、景況感予想と、概ね同様な傾向となっている。
 悪化予想ではあるが、最近のマイナス30ポイントレベルに比較すれば、緩和されており、評価が難しい動向予想である。
 悪化予想が多いのは食料品、繊維・同製品、窯業・土石、建設である。
 また一方、前月横這いの回答が当月実績68ポイント、向こう3ヵ月予想では71ポイントの大きな割合になっており、底打ち的な傾向を示す一面を持っている。
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