調査レポート
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景気動向調査
 平成10年12月  (平成10年12月末調査)
 岐阜県中小企業団体中央会では、県内中小企業の現況、課題を迅速にとらえ、これらの情報を関係行政等へ提供するとともに、本会事業の活用に資することを目的に、中小企業団体情報連絡員制度(政府指定事業)を実施しております。

 当制度に基づき、県内の主要業種85組合に中小企業団体情報連絡員を設置し、毎月の調査報告を収集しております。

 本レポートは、その中で、県内中小企業の景況動向について取りまとめたものであります。
  〔 1 〕12月の特色
◆ 年末需要、盛り上がりを欠く
◆ 景況感は下げ止まりか
◆ 収益状況の悪化は強まる
  〔 2 〕12月の概況
 当月の景気動向を景況感DI値で見ると、好転4ポイント、悪化39ポイントで、DI値はマイナス35ポイントとなり、前月のマイナス34ポイントと概ね同レベルの悪化が続いたことになる。9月、10月、11月がそれそれマイナス50ポイント台、同40ポイント台、同30ポイント台と改善し、当月に至っていることから、底打ち的な数値の動きになっている。

 例年12月は、年末年始の季節需要、建設施工の繁忙期により、前月比売上増加業種が増える。本年も小売業関係、食料品で売上増加になっているが、暖冬の影響、消費マインドの冷え込みにより盛り上がりを欠き、前年割れ、景況感は悪化という結果になっている。

 その他の前月に対する変化としては、前月まで公共工事発注が出遅れていた地区でも発注が動き、公共工事が本格化することが挙げられる。

 他の業種は依然、売上不振(需要の停滞)、販売(受注)条件の悪化等、厳しい状況が続き、業況は悪化、若しくは底這いとなっている。消費需要回復策をはじめとする景気浮揚策の強化を要望する声が依然続いている。

 前月比業況悪化の業種が特に多いのは食料品、窯業・土石、機械・金属、サービス業である。

 業況が好転したのは婦人子供服、銘木、岐阜商店街で、順調な業況が続いているには航空機関連である。


  主な業種区分の業況概況

食料品は、年末需要により、前月比売上が増加となっているが、業況の改善には至らず、反対に業況悪化業種の割合が4割を超えている。消費需要の停滞、暖冬、大型店・量販店の価格引下げ、あるいは競合により、売上の圧迫と低価格が厳しい。

繊維・同製品は、織物工業等川上業種は長期低迷に変化がなく、アパレル関係はコート類、靴下は売上が増加、他は低調となっている。ニット製品は、前月の大きな不振に対し、当月は概ね前年並みに戻り、一息をついた状況にある。

木材・木製品は、建築関係の木材は住宅建築の減少により依然低迷の中で、銘木だけが社寺仏閣関係の需要が重なり売上、受注ともに増加してきた。木製家具は売上動向が分かれ、岐阜地区は売上増加、飛騨地区は反対に減少となっている。売上増加の岐阜地区でも景況感を好転させるほどには至っていない。

紙・紙加工品、印刷、プラスチックの紙関係では、家庭紙は売上増加、他は反対に減少となっている。売上増加があっても、販売価格が厳しく業況の改善には至っていない。また、資金繰りの悪化傾向が強く、深刻な局面が続いている。印刷は売上減少、販売価格低下、収益悪化の景況下降局面の状況にある。プラスチックは取扱い分野によって業況が分かれ、食品包装容器は好調、日用雑貨は昨年並み、建築資材及び産業資材は冷え込みの業況が続いている。

窯業・土石の中の窯業は、低迷下の中での需要減少、業況悪化となっている。また、前年対比は全ての業種が業況悪化となっている。土石は、建設工事施工の本格化で、需要増、売上増となっているが、販売価格等の取引条件が厳しく、景況感の改善には至っていない。

機械・金属では、業況悪化業種が多い中で唯一航空機関係だけが好調を続けている。収益状況の悪化が続いており、今後の冷え込みが懸念される。

各種物産品は、年末需要の影響がなく、反対に売上は前月比を下回っており、業況は厳しくなっている。

卸売業では、飛騨地区総合卸は食品関係で売上が伸び、他は前月横這い。陶磁器卸は長期悪化が続いたうえに、さらに悪化となっている。

小売業は、年末需要により売上増加となっているが、盛り上がりに欠け、一部では年末という季節要因は無くなったのではないかとの感想が出るほどに低調に推移した。消費需要の低迷とともに量販店との競合による影響も挙がっている。

商店街は、地域差はあるが、概ね年末需要により売上増となっている。しかし、その盛り上がりが低く、業況悪化とする商店街が半数を超えている。特に婦人物中心に衣料品の売上が低水準となっている。

サービス業では、業種により状況が異なるが、総合すると最も業況の悪化傾向が大きい業種区分になっている。販売価格、収益状況、資金繰りの悪化傾向が強く、今後の推移が懸念される。

建設業では、公共工事発注の出遅れ地域がなくなり、公共工事部分は順調に推移したが、民需の冷え込みが大きく、業況は依然低迷している。また、厳しい受注競争、販売条件の悪化が依然続いており、企業経営は一段と厳しくなっている。

運輸業は、季節要因により売上が増加したところもあるが、総合して低調で、業況悪化の傾向にある。

  主な調査項目での動向
売上動向は、増加30ポイント、減少35ポイントで、DI値はマイナス5ポイントとなり、10月、11月の0ポイント、9月のマイナス11ポイントとを合わせると下降カーブが続いていることとなる。このマイナス5ポイントから年末需要によるプラス値を差し引くと、10ポイント以上のマイナス値になることを勘案すると、当月の売上動向の減少傾向は大きいものと推測される。
 なお、年末需要については、前月比売上増にはなったものの、その盛り上がりは小さく、大半が前年割れで、景況感も悪化となる程度のものであった。
 売上増加の業種は食料品、小売業、商店街で多く、一方減少の業種は機械・金属、繊維・同製品で多い。

受注動向は、増加23ポイント、減少35ポイントで、DI値はマイナス12ポイントなり、前月のマイナス7ポイントに対し、5ポイントのマイナス増となっている。受注増加の業種は食料品で、一方減少業種が特に多いのは繊維・同製品、機械・金属、サービス業である。

販売価格の動向は、上昇1ポイント、下降21ポイントで、DI値はマイナス20ポイントとなり、9月以降マイナス10ポイント台が続いたが、当月マイナス20ポイント台に戻っている。
 以前に較べ、当月の動向には販売価格下降の傾向が業種に偏る傾向が見られる。また、長期間下降が続き、下がるだけ下がった業種が多いため、市況価格は益々厳しいものになってきている。下降業種割合が他に較べ大きいのは、繊維・同製品、サービス業、窯業・土石である。

収益状況の動向は、好転4ポイント、悪化37ポイントで、DI値はマイナス33ポイントとなった。マイナス20ポイント台は前月、前々月の2ヵ月間で止まり、悪化傾向が再び強まったことになる。好転したのは、季節要因により売上が増加した業種だけであり、これらが前年対比横這い若しくは悪化であることから、季節調整をすれば悪化となることもあり、実質は悪化傾向がDI値より大きいものと推測される。倒産・廃業、従業員の削減等の発生が続いており、企業経営は益々厳しくなっている。
 悪化業種割合が特に大きいのは、機械・金属、窯業・土石、サービス業、繊維・同製品である。
   〔 3 〕向こう3カ月の動向
 向こう3カ月の景気動向予想は、好転予想3ポイント、悪化予想44ポイントで、DI値はマイナス41ポイントとなり、当月実績のマイナス35ポイントに対し、6ポイントのマイナス増の予想となっている。

 例年、1月、2月は営業日数の減少、不需要期に当たり、景況感が後退する。又、3月は年間で最も一般需要が増大する月に当たる。この3ヵ月を予想する場合、過去の傾向では1月、2月の下降分が大きく評価され、悪化の予想となる場合が多い。今回も、概ねこの季節要因による景況感の後退が予想されていると推測される。

 今回の予想の中で、特に危惧されるのは、この時期、公共工事施工の最繁忙時期、売上が増加する時期に当たり、建設業の景況感が好転するのが例年の傾向であるが、今回は横這い、一部悪化が予想されている。公共工事発注が出揃っている中で、この不況感は、民需の落込みの大きさを十分に窺わせるもので、景気回復の阻害要因が強いことを推測させる。

 その他の業種においては、消費需要の停滞、設備関連需要の減少が鮮明に表れ、低迷あるいは悪化の状況にあり、明るい材料は皆無に等しい。

 明るい材料としては、持家住宅の建築需要が少し動き出したこと、航空機関係が依然好調であることが挙げられる。このうち、住宅建築需要は、受注が大手ハウスメーカーに流れ、地元の工務店等に流れないため、影響が薄いことが挙げられ、明るさが半減している。

 好転予想業種割合は大きいのは銘木と岐阜地区土木である。

 悪化予想業種割合が特に大きいのは、食料品、窯業・土石、商店街、サービス業、紙・紙加工品、木材・木製品、次いで機械・金属となっている。


売上動向予想
は、増加予想11ポイント、減少予想40ポイントで、DI値はマイナス29ポイントとなり、当月実績マイナス5ポイントに対し、24ポイントの大幅なマイナス増となっている。一般消費の不需要期に当たること、営業日数が少ないことの季節要因が主な要因と考えられる。
 増加予想は建設業に回答割合が大きいが、他は0又は1の回答で、極めて少数の回答が各業種区分に分散した形になっている。このため、売上増加を牽引する業種を特定できず、現状の停滞あるいは下降から脱出する緒口が見付からない状況にある。
 減少予想が特に多いのは、食料品、商店街、サービス業、窯業・土石である。

収益動向予想は、好転予想4ポイント、悪化予想44ポイントで、DI値はマイナス40ポイントとなり、当月実績のマイナス33ポイントに対し、7ポイントの比較的大きいマイナス増が予想されている。要因は、売上動向予想の売上減少と重なるところが大きい。建設業だけが売上増加予想が多いにもかかわらず収益状況悪化予想が多いという特殊な予想となっている。これは民需の落込みによる競争激化、受注単価の下降によるものと推測される。
 好転予想業種は、航空機関連と季節の観光客増を予想する高山民宿である。
 悪化予想業種が多いのは食料品、窯業・土石、サービス業、繊維・同製品、建設業である。

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